7歳で出会って別れ,15歳で再び出会って別れ,29歳で三度出会う二人の女性の物語。
短い出会いの瞬間に,二人は充分に運命を感じ,お互いが光と闇,雨と虹,海と空のように切っても切れない何かだと信じる。一人は裕福な家庭に生まれたが,嘘つきで傲慢な母親に育てらた小瀧結珠(こたきゆず)。もう一人は団地住まいで,何かに依存して心酔し,飽きる(もしくは飽きられる)ことを繰り返すシングルマザーのもとで育った校倉果遠(あぜくらかのん)。
二人が求めているのは終始自分を愛してくれる「母親」で,でもその願いは残念ながら叶わないから,彼女たちは母親を求めるようにお互いを求めてしまう。けれど本当の母親たちが二人を振り回し,海の上の小舟みたいい一瞬出会って,短い約束をして別れることを繰り返す。
思えば中学生のころ,私にも果遠ちゃんみたいな友だちがいた。きれいな子で運動神経がよくて,だからなのか同性にはのけ者にされて,異性から自分を守るためにショートカットにしてかわいらしさをかくしていた。お互いの秘密をたくさん話したけど,今はどうしているか知らない。最後に会ったのは20歳のころだったと思う。話していると恋人といるより,楽しくさえあった。私たちの小舟はもう出会うことはないかもしれない。けれどこの本は私に彼女を思い出させた。
ライバルでも同志でもない女友だちはそう作れるものではない。この物語を読んで二人の関係を「恋愛関係」のように感じる人もいるかもしれないけれど,
私はやはり「恋人」ではなく「片割れ」と思いたい。
二人は恋人みたいに性欲が入り込む隙間すらない,魂の片割れなのだと。
この本には二人の物語のほかにも,心に残る言葉がいくつかあった。
人が別れるとき,捨てるのはいつも弱い人の方で,強い人から別れを切り出すと結局自分が辛くなること。
逃げたって解決にならない,なんていう人は想像力がなくて,逃げは立派な解決策でもあること。
今を生きている幼い子供に「時が問題を解決する」と説くことの無駄と残酷さ。
などなど。
タイトルの『光のとこにいてね』は二人が交わした約束の一つ。そして物語の終わりも,光に包まれていた。母親という存在に振り回され悩んでいる人には開いてほしい本だと思う。環境は人それぞれ違っていても,この本にはだれかの「光」になり得る部分があって,「光のとこにいていいよ」と思わせてくれる希望がちゃんと書かれていた。
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