2023年の本屋大賞受賞作『汝,星のごとく』の続編であり,2024年本屋大賞ノミネート作でもある小説。
表紙から『汝,星のごとく』の続編だと分かる美しい刺繍のデザインされた装丁。
発売されてすぐに借りて読んでいたのに,本屋さんで偶然サイン本に出会い買ってしまう。
内容はというと,続編としては申し分ない。個人的な意見だけれど,続編はがっかりすることもあるけれど,本作は「続編があってよかったな」と思える。
きっと作者としても,一冊のなかに書ききれなかった部分があって続編も含めて一つの作品に仕上げたのだと思う。
『汝,星のごとく』では触れられていない北原先生の過去にまつわる話と,櫂の作品としての「汝,星のごとく」のその後,そして暁美のその後が描かれている。
作者の凪良ゆうさんは,2023年の夏休み明けに学校へ足が向かない子たちへのメッセージ「#しんどい君へ」を出され,その中で自分の過酷な少女時代について触れられていた。そんな彼女だからこそ,これだけ運命に翻弄されながらも強く生きていく主人公を描き切ることができたのだと思う。
逃げだと非難してくる人たちのことは、「ぬるい人生送っていて幸せですね」とばかにしていい。
メッセージの中のこの言葉で,私は過去のもやもやが幾分晴れた気がした。
「運命から逃げるな」などと知った風に言う大人には本当に想像力がないのだ。追い詰められる前に逃げることは立派な選択だし,子どもなら逃げることは頼る人がいなくなること,すなわち命を懸けた決断なのだから。
そして,この作家の作品は「生きることをあきらめないで」というメッセージを同時に伝えている。生きていることが,何よりも大切で,そのためになら逃げても嘘をついてもいい時だってあるのだ。
そんなふうにはっきりと言ってあげられる大人でありたいと思いながら,本を閉じた。
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