司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『だれかののぞむもの~こそあどの森の物語』自分の人生を生きよう

岡田淳さんのこそあどの森シリーズの中の一冊。 「この森でもなければ その森でもない あの森でもなければ どの森でもない」 どこにあるのかわからないこそあどの森で起こる出来事が描かれるファンタジーシリーズ作品。 『ふしぎな木の実料理法』をまず読ん…

『黒牢城』歴史的ミステリー小説

何年か前の大河ドラマ「軍師官兵衛」が大好きな夫にもおすすめした小説をついに読了。 舞台は荒木村重が籠城する有岡城。織田信長に反旗を翻し立てこもった村重のもとに翻心するよう説得に行った官兵衛は捕らえられて地下の土牢に繋がれる。ここまでは歴史的…

『星を掬う』運命を変えるためになすべきこと

この作者らしい作品でした。 今回も運命と戦う女性たちの物語だった。 最高の夏の思い出が,最後の時間になり,離れ離れになった母子はラジオ番組をきっかけに再び巡り合い,一緒に暮らすことになる。そこにはすでに二人の同居人がいて,4人ともそれぞれ背負…

『正欲』正しさとマジョリティは必ずしもイコールではない

タイトルからして,一筋縄ではない感じがして,なかなか開かずにいました。 テーマは「性的少数者」つまりマイノリティなのだと思います。ですが,切り口は今までに見たこともないものでした。 初めて出会う考えがたいていそうであるように,驚きとともに圧…

『赤と青とエスキース』絵画の閉じ込めているもの

この小説の中に登場するのは「エスキース」(下絵の意)というタイトルの一枚の人物画です。その人物は赤いブラウスを着て,青い鳥のブローチをつけた若い女性。つまり赤と青と「エスキース」です。 この本は,その絵をめぐる30年間の物語です。 さて,本の…

『ゆうかんなアイリーン』女の子の強さは,いつはぐくまれるのか?

冬になると読みたくなる古い絵本。雪の日はとくに。 お屋敷の奥さまのためにドレスをしたてたお母さんが,出来上がったとたんに風邪で寝込んでしまいドレスを届けることができなくなる。そこでアイリーンがお母さんの代わりに吹雪の中,お屋敷までドレスを届…

『スモールワールズ』事実はいつも小説より奇

フィクションの世界では往々にしてハッピーエンド,もしくはきれいな終わりが予想でき,だからこそ「事実は小説より奇なり」なのだろう。 この本はそういった意味では現実に近いかもしれない。 6つのバラバラに思える短編が,かすかなつながりを持っている…

『夜が明ける』人が人を救うことは,できるのか?

社会の網目からこぼれ落ちてずっと深く落ちていく人々の物語。 主人公「俺」とフィンランドに実在した俳優・アキ マケライネンにそっくりな「アキ」との高校生から33歳までの友情を描いている。二人とも神様に見放されたようについてない生い立ちを抱えた少…

『透明な螺旋』理系脳へのあこがれ

今更ですが,作者 東野圭吾さんも,主人公 湯川教授も理系男子で,そんな理系ならではの論理的思考に憧れます。 実際にこんな風に理詰めで詰め寄られたら・・・と,考えるとゾッとするのですが,新刊が出ると「まあ,読んでおこうか。」と思ってしまう魅力的…

『手紙屋』人生を変える一冊になり得る物語

この作者の本を読むのは初めてではありませんでした。 ですから,きっといい話だろうという予感はありました。 私はよく「一冊の本は人生を変える」という表現を使います。それは実際にそんな体験をしたことがあるからです。一冊の本でなくとも,たった一行…