司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『このよで いちばんはやいのは』考えをめぐらすという体験を

本より,インターネットという人が増えている。子どもに限らず,どんな世代でも。 私はもちろん,本の側に立つ一人だけど(インターネットも使いますが,どちらが好きかと言われたら,迷いなく)それはどうしてかと,ときどき考えてみる。 あくまで個人的な…

『日のあたる白い壁』絵と出会う幸福を,ことばに変えて

美術館に行くことは,私にとって読書と同じように,生きていくために必要な行為だ。 そして,疲れているときは,図書館より美術館が安らぐ。 この本にあるゴーギャンの言葉を借りるなら,絵画のなかでは一言の説明もいらず「すべては一瞬のうちに尽くされる…

『みどりいろのたね』種を植えることで育つもの

絵本から児童書へと移行する時期に,お勧めしている本。 主人公のまあちゃんは,うっかりものでわすれんぼで,めんどくさがり。学校で種まきをした日,こっそり食べていたメロンあめをたねと一緒に植えてしまう。 水やりも忘れたままのまあちゃんに,たねた…

『ザリガニの鳴くところ』ゼロから人生を切り開く少女の物語

結局,女ほど孤独な生き物もいないのではないかと思う。命を宿した時のために,一人でも痛みや不安に耐えていけるよう,孤独を味わうために作られているのだろうか。 この物語の主人公カイアの孤独は舞台である湿地のごとく果のないぬかるみの様な孤独だ。ア…