司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

E 絵本の庭

『ぼくのブック・ウーマン』本と人の出会う場所で働くということ

どんな仕事も尊いものだけど,私はたくさんの仕事から司書を選んだことを誇りに思っている。 毎日本を読んでいる。当然本を登録したり,配架したり,返却したり貸し出したりしている。事務的で,静かで,変化の少ない毎日だ。 人によっては退屈だと思うかも…

『風をつかまえたウィリアム』伝記の可能性を信じて

「でんき」と言葉で伝えると,ほとんどのこどもが「電気」を連想する。それくらい「伝記」という読み物はあまり人気がなかったように思う。 でも,最近では絵本に「伝記絵本」というジャンルが定着し,本当にたくさんの作品が並んでいる。 私は「伝記」が好…

『虔十公園林』(けんじゅうこうえんりん)心の美しい人のまなざしで見た世界

宮沢賢治の本の中から一冊を選ぶのは本当に難しいけれど,どうしても何か一つ選ぶなら,私はこの作品を上げる。 虔十はみんなから「ちょっと足りない」と馬鹿にされているけれど,そう言われてもいつも「はあはあ」笑っていて,「雨にも負けず」にでてくる賢…

『このよで いちばんはやいのは』考えをめぐらすという体験を

本より,インターネットという人が増えている。子どもに限らず,どんな世代でも。 私はもちろん,本の側に立つ一人だけど(インターネットも使いますが,どちらが好きかと言われたら,迷いなく)それはどうしてかと,ときどき考えてみる。 あくまで個人的な…

『アンナの赤いオーバー』オーバーは人の手で作られる

12月が来ると読みたくなる絵本のうちの一冊です。 戦争の終わったポーランドで,新しいオーバーを買おうとする母と娘の物語。食べ物も日用品もない中で,子ども用の新しいオーバーを売っている店も見つからず,なにより買うためのお金もない。でも「戦争が終…

『いっさいはん』子育ては大変な時こそ,黄金期!

一歳半の子どもと過ごしたことがある人なら,だれでもこの本を読んで「あった,あった,こういうとき!」と思うでしょう。 口いっぱいに頬張っているときにかぎってくしゃみしたり,ズボンのポッケにごみのような宝物をいっぱいにしてみたり(我が家では冷凍…

『ざっそう』雑に扱われても,魅力的な草花たち

春になるとまずタンポポが咲き始め,オオイヌノフグリ(小さいころは語源を知らず得意になっていた)が小さな花をつけ,ナズナがいつの間にか花を開く。 夏には庭中がざっそうだらけになる。何度も草をとることになり,とった端からまた伸びてきてやっかいも…

『1つぶのおこめ』数のふしぎさと偉大さを教える,むかしばなし

むかしむかしのインドのはなし。ある年,お米が取れず飢饉が訪れる。自分勝手な王さまは,米蔵にいっぱいのこめを1つぶも分けようとしない。そこで,かしこいむすめラ―二が知恵をしぼる。ラ―二がこぼれていた王さまのお米を集めて届けると,お礼になんでも…

『あくたれラルフ』愛すべきあくたれのすがた

どんなに悪いやつだと分かっていても,いや悪いやつだからこそ,愛してしまうことがある。本当に困ってしまうけど,そういうことはある。 だからこの絵本はこんなふうにはじまる。 「あくたれねこの ラルフは,セイラの ねこでした。 あくたれでも セイラは…

『うまれてきた子ども』うまれてきた喜びを両手いっぱいに

この本の主人公は「うまれなかった子ども」。それが地球にやってきて,はだかんぼうであるいている。ライオンに出会っても怖くない,蚊に刺されてもかゆくもない。「うまれてないから,かんけいない。」 感情も欲もない「うまれなかった子ども」は犬にかまれ…

『エリザベスは本の虫』本の虫という生き方を貫いた女性の物語

本の虫という言葉が英語にもあると知ったのは大学生の頃でした。 book worm と呼ばれる本の虫が世界中に存在すると知った時の安堵感は計り知れないものだった。勉強するはずだった時間に本を開いてしまい,つい最後まで寝る間を惜しんで読んだことが何度あっ…

『ゆうかんなアイリーン』女の子の強さは,いつはぐくまれるのか?

冬になると読みたくなる古い絵本。雪の日はとくに。 お屋敷の奥さまのためにドレスをしたてたお母さんが,出来上がったとたんに風邪で寝込んでしまいドレスを届けることができなくなる。そこでアイリーンがお母さんの代わりに吹雪の中,お屋敷までドレスを届…

『ばばばあちゃんのおもちつき』理想のおばあちゃん像を追いかけて

「ばばばあちゃん」に出合ったのは子育てを始めてからだった。 最初は確か『すいかのたね』だったようなきがする。 ばばばあちゃんはとにかくユニークなおばあちゃん。子どもの心を忘れないし,どんなときも楽しい!やってみたい!と思うことを大切にしてい…

『ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス』クリスマスカードを開ける喜びを味わう一冊

この本は,誰でも読んだことのあるお話のキャラクターがクリスマスカードをもらうという設定。たとえば,ロシア民話3匹のくまの女の子や,赤ずきんちゃん,シンデレラなど。そしてゆかいなゆうびんやさんが届けたカードを封筒から出して読むことが出来る仕…

『とっときの とっかえっこ』絵本が伝える大切なことに,解説は不要。

子育て中に何度読んだか。そして何度読んでも途中で涙をこらえることになってしまう。せつないのでもなく,やるせないのでもなく,安心して泣き笑いみたいになってしまう危険な本。 おじいちゃんやおばあちゃんが出てくる絵本は多くて,子どもとお年寄りのペ…

食べ物と記憶 『おじいちゃんとパン』

それを食べるといっぺんに記憶がよみがえるようなものって,あるのではないでしょうか。私の場合は,お好み焼きとか(高校時代),チーズ蒸しパン(高校時代),山菜肉うどん(大学の学食),アンパンマンポテト(子育て期)などなど。 『おじいちゃんとパン…

『とうさん おはなしして』アーノルド・ローベルは大人にも必要

ちいさいころに何度も何度も読んだ本。 とうさんネズミが7人のこどもたちにそれぞれお話をしてあげて,寝かしつけるという設定。7つのお話がすべておもしろい奇跡のような一冊です。作者のアーノルド・ローベルがもし生きていたなら,明日にでも会いたい。ロ…