司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

『このよで いちばんはやいのは』考えをめぐらすという体験を

本より,インターネットという人が増えている。子どもに限らず,どんな世代でも。

私はもちろん,本の側に立つ一人だけど(インターネットも使いますが,どちらが好きかと言われたら,迷いなく)それはどうしてかと,ときどき考えてみる。

あくまで個人的な意見だけれど,(情報の信頼性が・・・とか,書いた人がきちんと分かるからというような説明のつく理由ではなく)本のアナログさが好きなのだと思う。

まず手に重みがあって,自分でページをめくらないといけないところや,頭の中でことばを映像に構築しなおしていく過程,そして作者の意図に思いを巡らせること。

この科学絵本は,題名の通り「このよで いちばんはやいもの」について考えを巡らせていく絵本だ。まず,「動物の中でいちばん はやいのは?」つぎに「人間が作り出したもののなかで いちばんはやいものは?」「生き物や乗り物以外のもので,はやいものは?」そして,さいごに「考え得るものの中で,いちばんはやいものはなにか」という問いに巡りつく。

そういう思考を深めるプロセスを,科学絵本は短い時間で体験させてくれる。考えるということが本を読むことの楽しみの一部だということに気づかせてくれる。同時にそれは知ることの楽しさであり,学ぶことの楽しさとも深く結びついているのだと思う。