司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

『1つぶのおこめ』数のふしぎさと偉大さを教える,むかしばなし

むかしむかしのインドのはなし。ある年,お米が取れず飢饉が訪れる。自分勝手な王さまは,米蔵にいっぱいのこめを1つぶも分けようとしない。そこで,かしこいむすめラ―二が知恵をしぼる。ラ―二がこぼれていた王さまのお米を集めて届けると,お礼になんでも褒美をやると言われ,

「王さま,おこめを今日はひとつぶ,明日は2つぶ,次の日は4つぶというように,まいにち前の日の倍の数だけ一か月の間ください」と,こたえる。

王さまはもちろん,願いを聞き届けてくれる。「王たるもの,ほうびはもっと気前よくとらせたいものだがな。」と,笑って。けれど内心「あの娘はあまり賢くはない」とまで思っている。

 

さあ,30日後にどうなるか,計算してみてください。

あなたも王さまと同じように思ったなら,途中で計算をやめたくなるかも知れません。

 

そして,もしも数がなかったらと考えてみてください。数学はよく文学と対極のように扱われますが,そうでしょうか。この世界の美しさや,真理を語るためにはどちらも必要です。数字は文字よりも先にあったとさえ言われています。このお話は,そんな数の歴史を感じさせてくれます。そして,黄金色をたくさん使った豪華な絵の世界観も,とても魅力的です。本を開く楽しみの一つ,「どこの国へでも,どんな時代にでも」トリップできることを教えてくれる一冊です。