どんなに悪いやつだと分かっていても,いや悪いやつだからこそ,愛してしまうことがある。本当に困ってしまうけど,そういうことはある。
だからこの絵本はこんなふうにはじまる。
「あくたれねこの ラルフは,セイラの ねこでした。 あくたれでも セイラは,ラルフが すきでした。」
セイラの飼い猫ラルフはどうしようもないあくたれで,家族だってあきれるほどのいたずらやいじわるをやってのける。みんなでサーカスを見に行った時,いたずらが過ぎてとうとう家族も愛想をつかす。サーカスに入れられたラルフは外の世界の厳しさを知り,同時に家族の大切さを知る。最後はセイラがラルフを助け出し,
「あたし いまでも あんたが だいすきなのよ!」
と最上級の温かさでむかえられる。
子どもたちに読んでみると「あくたれ」という言葉を知らないから,最初はみんなぽかんとしている。でも,ラルフはほんの数分で「あくたれ」の意味をどんな子にも理解させる。そしてサーカスでひどい扱いを受けたり,逃げ出してゴミ捨て場で眠るあたりで,子どもたちは神妙な顔になる。ラルフほどではなくても,子どもならあくたれたことが少しはあるから,他人ごとではない。そして,最後はあくたれでも家族を悲しませるようなことは控えようとか,でも多少の事は許してやるのが愛情なのだとか,読み手も子どもも感じて本を閉じる。
ラルフといたずらな子どもたちへ愛をこめて,もう一度書こう。どんなに悪いやつだと分かっていても,いや悪いやつだからこそ,愛してしまうことがある。本当に困ってしまうけど,そういうことはよくあるのだ。
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