司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

『とっときの とっかえっこ』絵本が伝える大切なことに,解説は不要。

子育て中に何度読んだか。そして何度読んでも途中で涙をこらえることになってしまう。せつないのでもなく,やるせないのでもなく,安心して泣き笑いみたいになってしまう危険な本。

おじいちゃんやおばあちゃんが出てくる絵本は多くて,子どもとお年寄りのペアはいつもユーモラスで中身は似ているのに外見は遠い不思議な存在。そんなお年寄り子どもペアの中でも特に好きなのが,この本の中のバーソロミューおじいさんととネリー。二人は大の仲良しで近所の人に「ハムエッグ」とよばれるほどいつも一緒。

ある日,昔のお話を聞いた後で「おはなしがなくなってしまうことはない?」と心配するネリーにバーソロミューは答える。

「もしなくなっても,だまっていればいいんだ。なかよしなら そうしていられる。」

子どものための本には,ときどきこんなぞくぞくするような言葉が出てくる。

絵本が教えてくれることは限りなくたくさんあるけれど,私は教訓めいた昔話にこれでもかと落ちをつけるより,余韻を楽しむ本を読んでやりたいと思う。

そして学校の先生たちに言いたいのは,読み語りの時間に「作者は何を言いたかったの?」とか「この本で勉強になったところは?」なんて愚問はやめて,こどものこころが感じた余韻をこわさないように,ただ黙って本を閉じてほしい。絵本の言葉は説明を必要としない明快さできちんと子どもの心に響いているはずだから。

 

とっときのとっかえっこ

とっときのとっかえっこ