「でんき」と言葉で伝えると,ほとんどのこどもが「電気」を連想する。それくらい「伝記」という読み物はあまり人気がなかったように思う。
でも,最近では絵本に「伝記絵本」というジャンルが定着し,本当にたくさんの作品が並んでいる。
私は「伝記」が好きだった。学校の図書室には偉人の伝記がずらりと並んでいて,あまり読まれていなかったけれど(もちろん昔は絵本などではなく分厚く字ばかりの本),「本当の話だ」と思って読むそれは,小説を読むのとは別の興奮を与えてくれた。
思えば「伝記」には,はずれがない。
どんな人も並外れた努力なり,経験なりをしている。或いはある日ふと素晴らしい思い付きをして誰に何と言われてもあきらめず,何かを成し遂げることで終わる。不遇な人生を送った人の伝記もあるにはあるが,少数だし,それはそれで教訓を与えてくれる。だから私は伝記を読むと,救われる気がした。この報われないがんじがらめの世界の先に,何か希望があるとちゃんと信じることができたから。
『風をつかまえたウィリアム』は貧しい国に生まれ,学校にも通えなくなったウィリアムが図書館に通い,自ら学び続け,やがて風をつかまえて発電システムを作り上げ,人生を切り開いていく物語だ。
本を閉じたとき,たしかに図書館は必要だと思えるし,どんな時にも考えることをやめないのが人間で,そういう動物である人間がいる限り本はなくなりはしないと思えた。
だから,きっとこれからも伝記絵本は増えていくと思う。そして、図書館も時代を超えてずっと存在するし、ウィリアムのような人もたくさん出てくると私は信じている。