この作者の本を読むのは初めてではありませんでした。
ですから,きっといい話だろうという予感はありました。
私はよく「一冊の本は人生を変える」という表現を使います。それは実際にそんな体験をしたことがあるからです。一冊の本でなくとも,たった一行の言葉が人生を変えることもあります。
この本は多くの若者のそんな一冊になり得る本だと思います。
喜多川 泰/作『手紙屋』にはサブタイトル~僕の就職活動を変えた十通の手紙~ と ~私の受験勉強を変えた十通の手紙~の2作品があります。それぞれ人生の岐路に立つ若者が,十通の手紙のやり取りで夢を叶える手助けをする「手紙屋」との文通を通して成長する姿を描いています。
子どもたちは,いつ大人になるのでしょうか?
法律的には二十歳(18歳?)になるときかもしれませんが,大人と子どもの境目はその日ではないと誰もが知っています。つまりその日を境に急に大人になるのでは決してありません。では大人になるのはいつでしょう?仕事を始めたときでしょうか?それとも自分の夢を叶えたときでしょうか?
では夢を叶えるために大学に行き,はっきりと描いた夢の仕事をしている大人はどれくらいいるのでしょうか?自分のことに照らしてみても,ただもやもやと目的も分からないまま目の前のことに追われている人がほとんどではないかと思うのです。
この本は,そんな大人と子どもの境目でもがいている人を救ってくれる本です。その境目が分からないからもがいている子どもたちに,大人とはどういう人間か,何のために働くのか,何のために勉強するのかをきちんと言葉で説明し,行く道を照らしてくれます。「こうしなさい」というのではなく,目指すものの正体をはっきりさせることで迷いなく自分で選び取る方法を教えています。
さて,私は司書になる,そして人のために本を手渡す仕事をするという夢を叶えました。そして今も誇りをもって仕事をする大人の一人として,この本を勧めたいと思います。
「失敗した人は才能を理由に挙げる。成功した人は情熱を理由に挙げる。」
『「手紙屋」~僕の就職活動を支えた十通の手紙』~P227より
何をもって成功というかはさておき,この本には成功の秘訣が書かれていると私は思います。前途ある若者に,ぜひ読んでほしい一冊です。
私は来年就職するかもしれない息子と,今年高校受験を迎えた息子にバレンタインのチョコレートとともに渡すつもりです。