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司書が本当にお勧めする本

『リンドグレーンと少女サラ』手紙がつなぐ友情

 半世紀生きて思うのは,女の友情って年が離れていたほうが育まれやすいのではないかということ。年が近いと,ライバルになってしまう可能性の方が高いけれど,年が離れていればお互いの声に素直に耳を傾けられる気がする。(もちろん例外はあるけれど)

この本は,あの偉大な児童文学作家「アストリッド・リンドグレーン」と手紙を通して友情をはぐくむ少女サラの往復書簡を集録している。

文通が始まったときサラは12歳,アストリッドは63歳。人生を危なっかしい足取りで歩み始めたばかりのサラに(控えめに言ってつまずき始めてもいたサラに)それと気づかれないように細心の注意をはらいながら進むべき道を照らそうとするアストリッド。会ったこともない少女に言葉通りの「親愛」をこめてつづられる手紙は,その後20年にも渡って彼女を支え続けることになり,最初のころにアストリッドが予言したとおり,青虫が蝶になるようにサラは数々の困難を自分で乗り越え成長していく。

子どもが大人になるためには,自立した大人がそばで見守ることが大切なのだと,この本は教えてくれる。そして,アストリッドがそうしたように,見守る大人には誰でもがなれる。会ったこともない子どもの,心を支える大人にでもなれるのだ。

アストリッド・リンドグレーンは本当に素敵な,ユーモアのある,自立した,孤独な女性で,これから老いていく私にも,サラに与えたのと同じ希望や喜びをもたらしてくれた。老いていくことを楽しみにさせてくれるこの本は,これから何度も読むことになると思う。そして勇敢な老女ほど怖いものなしな人種もいないと,私は思っている。