司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

9.文学の森

『滅びの前のシャングリラ』地球最後の日を 誰とどこで過ごしますか?

この作者はきっと世界の隅々までよく見える目を持っているんだろうなと思う。 小さな子どもが何でもない場面を細部まで覚えていることがあるように。 読んでいる間,映画を見ているようだった。 あなたが思った通りにはきっと終わらない物語だと約束できる1…

『お探し物は図書室まで』私もこんな司書に いつかなりたい。

司書という仕事の魅力はなんといっても,その人にとって今必要な本を手渡すことが出来た瞬間です。 悩んでいた人がスッキリとした顔で本を返しに来たなら,心の中でガッツポーズ。 「面白かったです。」「良かったです。」と,話しかけられたらこの先もきっ…

『逆ソクラテス』逆転の発想が いじめを止める

伊坂幸太郎さん自身があとがきの中で 「この本を書くために作家になったといってもいい。」 と書かれている。それほどまでにこの本は今までの作品とは一線を画す場所にある作品だと思った。 いじめについて,ある種の答えを出している本はいくつかあるけれど…

『ダンスダンスダンス』 人生はダンスのように

村上春樹の作品は私の高校時代のすべてです。高校時代に味わうべき感情のほどんどを村上春樹の小説で味わったと行ってもいいほどに。当時『ノルウェーの森』は大ベストセラーだったけど,私はどちらかというと初期の三部作の中の、主人公の不完全な偏りのあ…

『つめたいよる』に,天国のあの人に会えたら

ある日,本棚からふと手に取って1話目を一気読み。 いっぺんに本の中に入っていく感覚が味わえる作品。作者の名前の通り,この人にしか出せない香りがあって,懐かしい日向のにおいや,けだるい午後の雨のにおいのような,だれでも知っているなつかしいもの…