司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

『ダンスダンスダンス』 人生はダンスのように

 

村上春樹の作品は私の高校時代のすべてです。高校時代に味わうべき感情のほどんどを村上春樹の小説で味わったと行ってもいいほどに。当時『ノルウェーの森』は大ベストセラーだったけど,私はどちらかというと初期の三部作の中の、主人公の不完全な偏りのあるキャラクターが好きだった。

そして一番何度も読んだのが『ダンスダンスダンス』。主人公の「ぼく」は,やはり不完全で偏狭な性格。世間と距離をおき,自分の生き方だけを守っているようにも思える。適切な距離を保って運転しているみたいに。

けれど,「ぼく」はだれにも指図したりしないのに,私をぐいぐいひきつけてやみまなかった。

「物事の良い面だけを見て,良いことだけを考えるようにすれば,何も怖くない。」という教えは,その後何年も私を守ってくれた。

「音楽に合わせて自然に体が動くように,ただダンスしているだけ。」

世界に飛び出したばかりの,一人ぼっちの私にとって,この感覚的な生き方の「ぼく」は心の支えであり,最も親しい友人だった。いまでもときどき会いたくなる。

若い魂に必要なものがたっぷり入った小説だと思うし、どんな時代に生きていても「ぼく」のような友人を必要とする人はいると思う。

 

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

 

 

 

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)