司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

『13歳からのアート思考』絵をみるということを通して

高校時代から美術館に通っていた。文字の世界もいいのだけれど,絵の世界は一層静寂に満ちていてるところが好きだった。語り掛けるのではなく,絵はただそこにある感じがして(もちろん饒舌な絵というのもあるけど),読書も含めて言葉の世界に疲れたときはただ絵の前に座っていたいと思った。

心に残る絵を上げれば,それこそきりがない。それほどに,絵をみることは,読書と同じく心が必要としていることだったと思う。

幸運なことに次男は絵を描くことが好きで,大きくなってからは一緒に美術館に行くようになった。もともとこの本は彼に勧めるつもりで読んだ。

アートが伝えようとしてきたものの歴史を振り返りながら,実際に名画を鑑賞する過程でアート思考について学んでいく入門書として書かれている。題名にある通り,13歳でも十分理解できる言葉と内容で,この本を読むと美術館に行って絵の解説を読むより大切なことがきっとわかると思う。

結局,絵も本も,大切な何かを伝えるために,誰かが限りある命のなかの大切な一時を使って私たちに残してくれたものだのだと思う。だから,一つでも多くの誰かの思いを受け止めたいと思った。