司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

2022-01-01から1年間の記事一覧

『スモールワールズ』事実はいつも小説より奇

フィクションの世界では往々にしてハッピーエンド,もしくはきれいな終わりが予想でき,だからこそ「事実は小説より奇なり」なのだろう。 この本はそういった意味では現実に近いかもしれない。 6つのバラバラに思える短編が,かすかなつながりを持っている…

『夜が明ける』人が人を救うことは,できるのか?

社会の網目からこぼれ落ちてずっと深く落ちていく人々の物語。 主人公「俺」とフィンランドに実在した俳優・アキ マケライネンにそっくりな「アキ」との高校生から33歳までの友情を描いている。二人とも神様に見放されたようについてない生い立ちを抱えた少…

『透明な螺旋』理系脳へのあこがれ

今更ですが,作者 東野圭吾さんも,主人公 湯川教授も理系男子で,そんな理系ならではの論理的思考に憧れます。 実際にこんな風に理詰めで詰め寄られたら・・・と,考えるとゾッとするのですが,新刊が出ると「まあ,読んでおこうか。」と思ってしまう魅力的…

『手紙屋』人生を変える一冊になり得る物語

この作者の本を読むのは初めてではありませんでした。 ですから,きっといい話だろうという予感はありました。 私はよく「一冊の本は人生を変える」という表現を使います。それは実際にそんな体験をしたことがあるからです。一冊の本でなくとも,たった一行…

『ばばばあちゃんのおもちつき』理想のおばあちゃん像を追いかけて

「ばばばあちゃん」に出合ったのは子育てを始めてからだった。 最初は確か『すいかのたね』だったようなきがする。 ばばばあちゃんはとにかくユニークなおばあちゃん。子どもの心を忘れないし,どんなときも楽しい!やってみたい!と思うことを大切にしてい…

『吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる』ど真ん中ではないからこそ,救われる言葉

悩みを打ち明けたとき,当たり前の直球で返されると,「それは分かってるよ。」と思ってしまいませんか? もちろん,分かっていてもなお直球が欲しいときもあるけれど,本当に悩んでいるときは意外な一言や,ばかばかしいくらいの返事のほうがスッキリするこ…