司書の本棚

司書が本当にお勧めする本

『はれ ときどき ぶた』ときどき はちゃめちゃな物語を

子どもたちには,できれば毎日笑ってほしい。でも,現実の世界では厳しいことも,しんどいことももちろん超えていかなければいけません。だからときどき,はちゃめちゃな物語を読んであげたい。

主人公は3年生の畠山則安くん。友だちからは「10円やす」と呼ばれている。則安くんは,毎日日記を書いていた。「誰にも見せなくていいから,日記には本当のことを書くように」と先生に言われたので,人には知られたくないようなことも正直に書いていた。ところがある日,お母さんがだまって日記を読んでいることに気づきます。怒った則安くんは,でたらめの日記を書いて,お母さんをびっくりさせようとする。「トイレに大蛇が出た」とか,「お母さんが鉛筆のてんぷらを作ってくれた」とかありそうもないことを書いたのに,本当になってしまい・・・。

子の児童書は40年以上前からずっと図書室にある本だ。それなのに色あせず,今の子どもたちもちゃんと楽しんで読みむことができる。どんなに本が苦手でも,途中まで読んでやれば自分で続きを読んでしまう。(そしてゲラゲラ笑っている。)この本をきっかけに自分で読む楽しさを知った子を何人も知っている。

それからは,どんどん物語を読むようになった子もいるし,中には私に「続きを読んであげよう」と,言ってくれた子もいる。子どものなかには,今でもちゃんとばかな話で笑える感性があるし,読書離れというけれど本を読んで楽しいと思う心はどの子にもあるのだと,私は信じている。だからときどきは,いかにも子ども好きしそうな,はちゃめちゃな物語をいっしょになって楽しみたいと思っている。