小学校5年生くらいの事だったと思います。その日風邪をひいて休んでいた私は,親の本棚から『窓際のトットちゃん』を取り出しました。いわさきちひろさんの絵による絵本を読んだことがあり,表紙の絵を見て「これならよめるかも・・・。」と思ったことを覚えています。
当時の私は,学校には訳もなく他の子をからかったり,弱い,言い返せない子を的にして遊び半分でいじめる子がいることを知っていましたし,実際自分が的になったこともありました。そして,これが一番絶望的だったのですが,いじめた子を叱る大人は,私の周りにはいませんでした。
そんな世界にいた私にとってこの本は世界で最初の外の世界への窓を開けてくれた本でした。
どんなに先生に叱られても,「あら,どうして?」というふうなトットちゃんもですが,何より神様のような小林先生。私の小学校なら一日100回くらい怒られそうなトットちゃんに「きみは,ほんとうはいい子なんだよ。」と言い続ける,やさしさ!
「世界にはこんな子がいるし,こんな学校があるし,こんな校長先生がいる!」と思った時,感動と衝撃と安心がまさに霹靂のように落ちてきたあの日を忘れることはありません。あの日の私が今の私の始まりだったと思っています。
現実が困難であればあるほど,その辛さで外の世界は見えなくなります。特に子どもにとっては目の前の現実が全てです。けれど本を開けば絶望を忘れてどんな世界にも行くことが出来ます。どこからでも,なんどでも。
私にとってトモエ学園がそうであったように,心の支えが一冊あるだけでずいぶん違った毎日が来ると思います。
それから私が本のとりこになっていったのは言うまでもありません。いまでも一年に何度も読み返します。そのたびにいっぱいに開いた窓からは心地よい風が吹いてきて,「大丈夫,きみはとってもいい子なんだよ。」と言われている気がするのです。
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